サツマイモの栽培方法は?初心者も安心!プランターでの簡単栽培・地植え向けマルチングの方法もご紹介

2020年7月7日


初心者でも育てやすいサツマイモは、家庭菜園におすすめ。地植えでなくても、ベランダでのプランターでの栽培も可能です。つまずきやすい土作りやマルチングについても詳しくご紹介。苗の植え付けから始める、失敗しないサツマイモ栽培のポイントをみていきましょう。

サツマイモとは?

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サツマイモの特徴

学名:Ipomoea batatas
その他の名前:薩摩芋(さつまいも)、甘藷(かんしょ)
科名 / 属名:ヒルガオ科サツマイモ属

サツマイモは中央アメリカが原産の野菜で、一年草、半耐寒性、つる性の植物に分類されます。
和名とされる「薩摩芋」は、かつて琉球王国(今の沖縄県)から薩摩国(今の鹿児島県)を経て伝わったことが由来だと言われています。
その他にも、地方によって「唐芋(からいも)」「蕃薯(ばんしょ)」など、様々な呼称があります。

また、暑さに強く、窒素の少ない痩せた土地でも育てやすいため、栽培初心者にもおすすめの作物です。
連作障害が起きにくい点も人気の理由でしょう。
ホームセンターなどで購入できる苗から育てるのが一般的ですね。
気をつけたいのは、肥料の与えすぎによる「つるボケ」。
つるばかり茂って、イモが少なくなってしまうことを指します。

しかし、簡単なポイントさえおさえれば、サツマイモはプランターで育てることも可能です。
収穫後のイモは貯蔵もでき、追熟も楽しめます。

サツマイモの種類

市場で多く見かけられるサツマイモの品種をご紹介します。
大きく2つの種類に分けられます。

<ホクホクタイプ>
・紅あずま
・鳴門金時(徳島県)
・紅さつま(鹿児島県)

<しっとりタイプ>
・紅はるか
・シルクスイート

サツマイモの人気品種である「安納芋」はしっとりタイプに分類されますが、果肉がオレンジという特徴でも分けられます。
生でも非常に糖度が高い品種ですが、時間をかけて焼くことでさらに糖度が増し、40度前後になることも。
スイーツとしても楽しめるような甘みが人気の秘訣でしょう。

サツマイモの栽培スケジュール

サツマイモの栽培条件から見ていきましょう。
・日当たりの条件:日なた
・生育温度:25~30℃(地温は22~26℃が目安)
サツマイモは寒さに弱く、暑さや乾燥に強い野菜です。
霜の心配がなく、地温が上がった時期に植え付けを行いましょう。

大まかな栽培スケジュールは以下の通りです。
・植え付け時期:5月半ば~6月半ばにかけて
・開花時期:8~9月(※短日性が強いため、沖縄県以外ではほとんど開花しません)
・収穫時期:9月半ば~11月半ば
植え付けから収穫までの期間は4.5ヶ月ほどです。

苗の植え付けは梅雨入り前に行うのが一般的です。
これは、梅雨の雨を利用して成長を促すためです。
ただし、早く植えすぎるとイモが大きくなりすぎてしまうため、注意しましょう。
植え付ける1〜2週間前には土作りや、畝立てなどの準備を行います。
また、収穫時期は寒くなり始める頃にもまたがりますが、霜が降りる前には収穫を全て行いましょう。

サツマイモの育て方

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まず、サツマイモの栽培に必要なものを準備しましょう。
・苗(挿し穂):4月の下旬にホームセンターなどで販売が始まります。
・土:乾燥し、通気性の高い痩せた土地がおすすめです。

ベランダでの栽培ならばプランターを用意します。
詳しくは後述しますが、中型・深型のものなら2〜3株育てられます。
1株の育成ならば、大型の植木鉢でも栽培可能です。

地植えなら黒いマルチングシート(マルチシート)を用意します。
これはイモを大きくすることや味の向上につながるほか、雑草除けや収穫の際にも役立ちます。

サツマイモの苗(挿し穂)の準備

苗(挿し穂)を準備します。
4月ごろから量販店(ホームセンター)などで買えるようになるサツマイモの苗(挿し穂)。
こういった市販のサツマイモの苗から簡単に育てられます。

いわゆる良い苗は、茎が太く、節間が間のびしていないのがポイントです。
葉色が濃くて厚みがあり、節数は4〜5、長さが15〜20cmくらいのものを目安としましょう。
10本程度の束になって売られている切り苗は、サツマイモから伸びたつるをある程度の長さでカットしたものです。
こちらもつるがしっかりとし、葉色が濃いものを選びましょう。

植え付けまでに間があり、苗を保存しておく場合は、水に浸けて日陰に置きます。
バケツに浅く水を張った状態で浸けておくことで、1週間程度はもちますよ。

<失敗しないポイント>
・茎が太い
・節間が間のびしていない
・葉色が濃くて厚みがある
・節数が4〜5ある
・長さが15〜20cmくらい

サツマイモのプランター

地植えしない場合や、場所を十分にとれない場合、サツマイモはプランターでの栽培も可能です。
苗を2〜4株程度の植え付けを考えているならば、幅60cm以上、土量をしっかり入れられる深型の大きなプランターがおすすめです。
材質はプラスチック製、素焼き製どちらでも問題ありません。

1株の植え付けならば、深型・大型の植木鉢でもOKです。
そのほかスペースが限られた場所では、土のう袋を使って栽培することもあります。

<失敗しないポイント>
・幅60cm以上
・土量の多い深型
・プラスチック製、素焼き製がおすすめ

サツマイモの土作り

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サツマイモ栽培の大きな特徴であり、ポイントとなるのが土作りです。
サツマイモは肥料が効いた肥沃な土地で育てると、葉ばかりが茂ってイモが育たない「つるボケ」を起こしてしまいます。
そう言った理由から「やせ地」で育てるのが一般的です。
栽培に慣れ、大きなサツマイモを育てたいという場合には施肥・追肥することもありますが、
まずは肥料は最小限(施さない場合もあります)で土作りしましょう。
用土は、水はけのよいやせ地を選びます。pHは5.5〜6.0が目安です。

また、土作りのために知っておきたいのは、サツマイモはその組織内で「アゾスピリラム」という微生物と共生していること。
これらは空気中に含まれる窒素から窒素固定を行い、自ら栄養分を作り出すという働きをもっています。
合わせて、窒素が多すぎるとつるボケになること、イモの肥大にはカリウム成分が大きく関係しているということも重要です。
こう聞くと「カリウムだけをあげれば良い」と考える方もいるでしょう。

しかし、サツマイモがカリウムを吸収するためには、その半量程度の窒素が必要になります。
それらを考慮すると、サツマイモを大きく育てるためには、カリウムと窒素をバランスよく与えることが大切なのです。

なお、カリウム成分としては「石灰」や「草木灰」の利用がおすすめです。
1平方メートルあたり窒素3g、リン酸6g、カリ10gを目安に土作りを行いましょう。
また、サツマイモ専用肥料も販売されています。

<畝作り>
地植えの場合は土を耕した後に、畝を作ります。
幅は60〜90cm程度、水はけや通気性を重視し、高めの畝を作りましょう。
目安は20〜30cmほどです。

<失敗しないポイント>
・植え付けの1〜2週間前に土作り
・肥沃な土地を避け、やせ地で育てる
・土作りは1平方メートルあたり窒素3g、リン酸6g、カリ10gを目安
・畝は幅は60〜90cm程度、高さ20〜30cm程度

サツマイモの肥料

土作りの項目でも多少触れましたが、サツマイモ栽培においては肥料は基本少なめ、場合によっては与えないこともあります。
これは肥料過多によるつるボケを防ぐためです。追肥も基本的には行わず、元肥のみで育てます。

肥大化を狙う場合は、サツマイモ用の肥料を利用するのもおすすめです。
これらの多くはサツマイモの性質に合わせて窒素成分は少なめ、その倍ほどのカリウムで配合されています。
追肥を行う際は6月中に済ませましょう。
生育が進んでからの追肥は、イモの肥大化を妨げる恐れがあります。

<失敗しないポイント>
・肥料は少なめ(利用しない場合もある)
・追肥は基本行わない
・サツマイモ用肥料の利用もおすすめ

サツマイモ専用肥料

アミノール化学 サツマイモ専用肥料 600g

アミノール化学 サツマイモ専用肥料 600g

イモ作りにおいて重要な草木灰を配合。つるボケを防ぎ、玉太りも期待できます。

サツマイモのマルチング

サツマイモ栽培は長期に渡るため、地植えの場合はマルチングが重要になります。
マルチングとは、植え付けた植物の地表面をビニール(マルチングシート)などで覆うことをいい、雑草や病気を防ぐなどの役割があります。
プランターでの栽培では必要ありません。
雑草防止以外にも、寒さに弱いサツマイモの生育初期の地温確保や、乾燥の防止に役立つほか、不定根を抑える働きもあります。

不定根とは、サツマイモの節間から出る根のこと。
これが大きくなるとイモになりますが、成長に合わせてその不定根は増えていきます。
過剰に不定根が増えてしまうと、せっかく実った芋が全体的に小さくなってしまうことも。
バランスをみて、適度に育てることが大切です。

マルチは畝に張り付け、その中心部に畝に平行になるよう30cmおきに穴を開けます。

<失敗しないポイント>
・黒マルチを使用する
・プランターでは必要ない
・マルチは畝に被せ、30cmおきに穴を開けて使用

初心者でも安心!張りやすいマルチ

初心者におすすめ かんたんマルチ 幅95cm×長さ10...

初心者におすすめ かんたんマルチ 幅95cm×長さ10m 2列穴あき 黒 0.03mm厚

破れにくく、初心者でも安心して張れるマルチです。
植え付け穴も空いており、穴あけの作業時間も短縮できます。

サツマイモの植え付け

サツマイモの苗(挿し穂)の植え付け方にはいくつかの方法がありますが、まず基本的な流れを見ていきましょう。
マルチに開いている穴から、植え付け用に深さ10cm程度の穴を掘ります。
そこに苗を寝かせるようにおき(一般的な水平植えという方法です)土を被せます。
ポイントは、3〜4節が埋まるように植え付けること。
こうすることで、イモを実らせやすくなります。

先述した植え付け方法以外にも、合わせて3種類の植え付け方があります。
・水平植え:一般的な方法で、イモ数が多くなりやすいです。
・斜め植え:定着しやすいです。
・垂直植え:イモ数は少ないが大きくなり、甘みも凝縮しやすいです。

地植えで数が多い場合には、植え付け用の補助器具を使うのもおすすめです。
器具を使うことで立ったまま作業を行えます。

プランター栽培の場合はイモが大きくならないため、深く植えすぎず、浅く植えるのがポイントです。

<失敗しないポイント>
・どんな風に育てるかによって、植え方を決める(植え方は3種類)
・10cm程度の穴を開け、そこに寝かせるように植えるのが一般的
・プランター栽培は、浅めに植える

植え付けもらくらく!サツマイモ苗植え付け器具

かんしょ植え付け器・さすけ AP-02

かんしょ植え付け器・さすけ AP-02

立ったままサツマイモの苗の植え付けを行える器具です。
苗を器具にからませ、土に差し込んでから引き抜くだけ。
マルチの上から差し込むこともできるため、マルチに穴を開ける手間も省けます。

サツマイモの水やり

植え付けから1週間は、水やりは毎日行います。
定植後は、サツマイモは乾燥に強いためほとんど水をやる必要はありません。
土の表面が乾いていたら水やりをする程度で良いでしょう。プランター栽培の場合も同様です。

逆に水をあげすぎてしまうと、腐ったり病気になったりする場合もあります。

<失敗しないポイント>
・植え付け後1週間は毎日水やり
・定植後は表面が乾いた時にたっぷり水やり
・プランターでも同様

サツマイモの除草

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サツマイモの栽培において、とても重要なのが除草作業です。
害虫や病気の予防につながるほか、日当たりを良くすることにもなるため生育に大きな影響があります。

除草のタイミングは植え付けてから30日ほどです。
この時期を逃すと、雑草とつるを見分け辛くなる上に、害虫や病気も発生しやすく、さらには炎天下の中での作業になってしまいます。
雑草が伸びきる前に除草しましょう。その後、生育を促されるように日当たりが良くなったサツマイモはつるがあっという間に伸びて、雑草が生える隙もなくなります。
タイミングはプランター栽培でも同様です。
きちんとしたタイミングで除草を終え、手軽に美味しいサツマイモが実るのを待ちたいですね。

<失敗しないポイント>
・植え付けて30日ほど経過したら除草する
・それ以降は害虫・病気の発生する可能性も高くなる
・ベストな時期を逃さない(プランターも同様)

サツマイモのつる返し

つる返しとは、植え付けた部分のイモをしっかり大きく実らせるために行う作業です。
サツマイモは、つるが伸びて土につくと新たな根を出しますが、それらが成長してしまうと栄養は分散してしまいます。
そこで、不要に伸びつつある根は引っこ抜いて葉の上に乗せるという作業を行います。
プランターで栽培する場合も概ね同様ですが、伸びたつるは切ってしまっても構いません。

<失敗しないポイント>
・伸びたつるが新たな根を張り始めたらつる返しを行う
・この作業をすることで、大きなサツマイモを作ることにつながる
・新たな根が出るたびに行う

サツマイモの害虫・病気

サツマイモに発生することが多い害虫や病気は以下の通りです。
詳細な対策などは、別記事をご参照ください。

害虫:ハダニ、アブラムシ、ヨトウムシ
病気:うどんこ病、つる割病

サツマイモの収穫

サツマイモは植え付け後110〜140日後に収穫可能になります。
葉の色が薄く、赤色や黄色などに変色してきたら収穫の目安です。
そのほか、つるの色が紫になったらというのもポイントですね。

収穫は晴れた日の午前中に行いましょう。これは、掘ったイモを乾かすためです。
手順は、まずツルを株元で切ってからマルチを剥がします。
イモを傷つけることもあるので、スコップを使って周りから少しずつ掘り起こしていきましょう。
軍手など使って、手で掘る場合もあります。

収穫のタイミングに不安がある方は、試し掘りという手もあります。
掘ったイモから時期を見極めて、残りは生育を楽しみながら別の時期に掘るという方法もあります。
ただし、霜が降り始めると貯蔵性が下がってしまうため、その時期に差し掛かる前には全て収穫しましょう。

プランターの場合も同様に掘り起こします。
上記にプラスして、シートを広げ、そこで余計についている土や根をとってしまうのがおすすめです。

<失敗しないポイント>
・植え付け後110〜140日後に収穫可能
・葉の色が赤や黄色になり始めたら収穫の目安
・収穫は晴れた日の午前中に
・イモを傷つけないよう、周りから少しずつ掘り起こす

サツマイモの貯蔵

追熟するサツマイモは、収穫後1〜3週間保存することで甘くなります。
これはサツマイモの成分に関係があります。
収穫したてのサツマイモは、その主成分である炭水化物のほとんどがデンプンであるため甘くありません。
それが保存している間に、デンプンが糖化して甘くなるのです。

9℃以下になると腐りやすくなるため、冷蔵庫での保存は厳禁。12〜14℃の冷暗所で貯蔵しましょう。
少量であれば新聞紙に包んで、量が少し多めの場合は発泡スチロールなどに入れての保存がおすすめです。

<失敗しないポイント>
・収穫後は1〜3週間貯蔵する
・冷蔵庫での保存はNG
・12〜14℃の冷暗所で保存する

初心者でも大丈夫!まずはプランターから始めてみよう

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初心者でも安心して育てられるサツマイモ。
場所の広い地植えの家庭菜園でなくとも、栽培は可能です。
ベランダでのプランター栽培でも、サツマイモ栽培の魅力は存分に堪能できます。
まずはプランター栽培でコツを掴んで、収穫を楽しんでみてはいかがでしょうか?